【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
虚ろな心
あの日から、部長はたまにやってきてご飯だけを食べて、少しくつろいで帰るという事が増えた。

今日も、また食べにくると連絡があったのは、もうすぐ22時になろうとした。

こんな遅くから来るのはかえって大変なのではないのかな?
そう思っても、それを言ってしまって来てくれなくなるのも寂しい自分に気づいた。

急いで最近わかった、部長の好みから作っておいた作り置きを温める。

決して報われないと自分でもわかっているのに、甲斐甲斐しくいつ来るかわからない部長のために作り置きをしている自分が、少しおかしくも悲しくもあった。

でも、どうしても止めることができないこの思いに、もう逆らうのもやめた。

どんなに彼女に悪いことをしていても、再会して、もう一度感じてしまったこの思いの止め方を私は解らなかった。
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