【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
大人になるという事
翌日、ずっと履いていなかったスカートを手にして、鏡の前にいた。
大学時代はかわいい服も、長い髪も大好きだった。

あの日から、それらを封印してきた。

「これなら、今でも履けるかな……」
シンプルな黒のスカートを履き、ニットを着て少し甘めのメイクを施す。
少しだけあの頃に戻った自分の姿に、少しだけホッとする。

恨むべきなのは彼ではなく、進めなかった自分なのかもしれない。
そう思うと、部長にも普通に接することができるような気がした。

久しぶりのスカートは少しだけ、気分を上げてくれて、フワリとスカートを揺らしながら会社へと向かう。


こんな日に一番に会う人があの人なのは、神様の悪戯なのかな?そんな事を思いながらエレベーターを待つ部長の隣に立った。
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