【コミカライズ】若き社長は婚約者の姉を溺愛する《宮ノ入シリーズ①》【番外編更新】

【番外編】兄と弟 ※瑞生視点

「お前に腹違いの兄がいる。名前は八木沢直真という」

 幼い頃、事故で両親を亡くした。
 だから、俺の身内は祖父だけだと思っていた。
 高校受験を控えた年、突然、祖父から告げられた『血縁者』の存在。
 それも兄。

「なぜ、今になって……?」

 唐突すぎる祖父の言葉に一瞬だけ思考が停止した。
 兄と言っても異母兄。
 父には、母の他に好きな相手がいたのか?
 俺の母と結婚する前から――

「宮ノ入が嫌で逃げた女だ。妊娠しているのを隠し、一人で産んで育てたらしい」
「じゃあ、父さんは……」
「息子の存在を知らずに死んだ。それで、瑞生。お前はどうする?」

 俺は何も言えずに、祖父を見ていた。
 兄を宮ノ入家に迎えるのは、俺の返事次第なのか、普段は独裁的な祖父が、珍しく俺に意見を求めてきた。
 祖父は俺が中学生であっても、甘えは一切許さない。
 一人前として扱う。
 それは、俺がこの宮ノ入グループの跡継ぎだからだ。
 両親の葬式の時でさえ、俺は泣くことを許されなかった。
 泣かなかった俺を『可愛げがない』と囁いていた。
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