エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
幸せの一夜
 合わせたグラスが、チン、と軽やかな音を立てる。

 中に入ったシャンパンがぱちぱち弾ける音まで聞こえそうだ。

「では、今夜の二人に乾杯」

 隣の彼にやわらかな笑みで言われて、(あずさ)はそれが移ったように笑顔になっていた。

「はい、乾杯……です」

 口に含んだシャンパンはほのかに甘かったけれど、確かにアルコール。まだ成人して数年で、アルコールにそれほど慣れない梓をくらくら酔わせてくる。

 でもその酔いはきっと、シャンパンによるものだけではなかった。

 薄暗いバーの席、すぐ隣で梓に優しい視線を向けている彼・和臣(かずおみ)の存在が、梓の心を蕩かせ、酔わせていったのだろう。




 そのあとのことは、幸せいっぱいだった。

 ホテルの最上階に位置していたバーを出て向かったのは、そのすぐ下の階にあるスイートルーム。

 ベッドはふかふかで、シーツはぱりっとして心地良かったけれど、梓がそんなことを感じられていたのはほんの数秒だった。

「……かずおみ……さん……」

 すっかりとろっとしてしまっている声で、梓は彼を呼ぶ。

 梓をベッドに組み敷き、頭の横に手をついて、見下ろしてくる彼のこと。

「梓……。ずっと、こうして触れたかったんだ」

 そっと手が触れてきた。

 梓の頬に触れ、やわらかく撫で、包み込む。

 その触れ方と体温があまりに心地良くて、梓はつい笑みを浮かべていた。

 とろっとした笑みになったけれど、そのぶん、幸せな気持ちがあふれ出したようだ、と自分で思った。

「……嬉しい」

 それだけ口に出した。

 それだけになったのは、数秒後には、梓のくちびるは塞がれていたからだ。

 和臣が身を屈め、くちづけてくれたために。

 シャンパンの味がする、ふわふわするような、とても心地いいキス。

 梓は腕を持ち上げていた。スーツを着ていた和臣の背中をきゅっと握る。

 それに応えるように、和臣は梓の頬をしっかり包み込んで、たくさんキスを繰り返す。

 夜のはじまりのくちづけから既に、甘くて蕩けるようなものだった。
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