エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
懐妊
「四ヵ月に入ろうとしていますよ」

 お腹にひんやりする機械を当てられながら言われて、梓はなんと返事をしていいかわからなかった。

 嬉しいのか、それとも別の感情があるのか、それすらわからない。

「気付くのが少し遅めでしたね。兆候は感じませんでしたか?」

 診てくれているのは女医であった。

 梓のお腹に当てた機械からの映像、エコーというものの画面を見ながらそう聞いてくる。

 その質問はちょっと答えにくい。

 まるでなかったとはいえないのだから。

「ええ……、生理がこないなぁとは思ってましたけど、元々そんなに安定してなくて……、ちょっと色々あったので、そのストレスなのかなぁと……」

 梓が濁った声で話した説明に、女医は納得したように頷いた。

「なるほど。失礼ですが、ご結婚は……」

 しかし次に来た質問は、もっと答えにくかった。

 気付くのが遅かった上に、梓はまだ若い。

 この年齢で結婚済みだったら、このご時世では少々早いほうになる。

 だから女医も『否』を予想して聞いてきたのだろうけれど、梓はその通り答えるしかなかった。

「……していないです」

「では、彼氏さんは?」

 これにも梓は少しうつむいたまま、答えを濁らせるしかなかった。

「……今は……」

「……そうですか」
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