エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
初めてのおうちご飯
 和臣が手をかけたその扉は、すっと音もないというほどスムーズに開いた。

 梓は少々緊張する気持ちを感じながら、中に入る。

 なんと挨拶するのが適切か迷った隙に、梓と共にいた和はまったく緊張する様子などなく、「わぁい! すごーい!」と中に入って、靴をもどかしげに脱いで、室内に上がって、走らんばかりの勢いで奥へ向かっていった。

「おい、和。転ぶぞ」

 和臣が苦笑しながら自分も上がり、和を追った。

 緊張は解けないものの、喜びに高まってくる気持ちも湧いてきて、梓は靴を脱いで、くるっと回して置き直した。

 和のものも同じく向きを直してから、二人を追う。

「……っ、たかぁい……!」

 リビングに入った和は窓の外を見て、息を呑んだようだった。

 それもそうだろう。

 ここ、和臣の住む家は三十階にあるのだから。

 最上階でこそないが、マンションの中でもかなり上に位置する部屋だ。

 今まで梓と和が住んでいたのは小さく、それほど新しくないマンションの二階だったから、新鮮で驚くに決まっていた。
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