エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
和の不安
 その夜の和は何故か元気がなかった。

 帰ってきてからも言葉少なで、梓はちょっと気にかかったけれど、機嫌が悪いだけかもしれない、と思った。

 だから今日は少し帰りが遅くなってしまったこともあり、あとで聞こうと思っていた。

 でも夕食のとき、はっきり悟った。

 これは明らかになにかあったのだ。

 その証拠に、和は大好きなハンバーグも、ゆっくりとしか食べていない。

 普段は梓が「喉に詰まるでしょ」と制止することすらあるくらい、ぱくぱく食べるのに。

「……和、なにかあった?」

 食べ終えて、片付けのとき、梓は和に聞いてみた。

 最近ではお手伝いも上手になった和は、使った道具で洗わないもの、コースターやランチョンマットなどを片付けてくれていたのだが、顔を上げただけで、なにも言わなかった。

 ただ、その目を見て梓は悟る。

 どこか固い瞳なのに、その奥に揺れるような色がある。

 なにかあったのだ。

「なにかあったなら、ママにお話しして?」

 片付けも終わって、リビングに移動して、梓は優しい口調で聞いた。
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