エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
それぞれの気持ち
 翌朝の梓はだいぶ手こずることになった。

 和が駄々をこねて、普段なら大好きで、自分から進んで「行こう!」という幼稚園に行きたくないと言い出したからだ。

「和、きっと結花ちゃんたちも待ってるよ」

 着替えもしないとごねる和にそう言って促したが、それでも頷かない。首を振るばかりだ。

 気持ちはよくよくわかるから、梓は和を叱ることなどできはしなかった。

 そもそも自分のせいと言えるのだから。

 それでも行ってもらわないと困る。

 朝から百合子に預けるなんて迷惑だし、仕事を休むわけにもいかない。

 なんとかなだめすかして、着替えをさせて、ご飯もほとんどは食べさせて、送っていった。

 そして自分は【ゆずりは】に出勤したのであるが、昼にもならないうちに電話がかかってきた。

 スマホにではない。店にである。

 梓は接客業という仕事上、仕事中にスマホを見ることができない。

 よってかけても出ない場合、仕事中である可能性が高いので、【ゆずりは】にかけてもらうよう頼んでいたのだ。

『和ちゃんが熱を出してしまって……』

 電話の向こうで、園の先生が困った声音で言ってきた。
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