ふしだらな医者ですが、 君だけの男になりました。
0.プロローグ



【ふしだらな医者ですが、君だけの男になりました。】





――……やってしまった。

隣で寝息を立てているよく見知った顔を見下ろした私は、自己嫌悪に陥りながら大きなため息を吐く。

ここは都内の五つ星ホテル。

肌ざわりの良いシーツと、絶妙な硬さの枕。アンティーク調のシャンデリア。洒落た高級ソファー。その背もたれには私のワンピースが無造作に掛けられている。

昨日はハズレ合コン帰りにたまたまこの人に会って、『飲み直したいから付きあってください』と私から誘った。

連れてこられたのが、私のお給料では行くことのできない高級ホテルのバーラウンジだったのもあってテンションが上がって飲み過ぎてしまった。

記憶がなくなるまで飲んだわけではないのだけれど、正常な判断が出来なくなるまで酔っていたのは事実だ。

でもだからって、こんな女遊びばっかりしているふしだらな男とシテしまうなんて私もどうかしていた。お酒の力って恐ろしい。

――と、とにかく急いで着替えて家に帰ろう。よし!

そっと起き上がりベッドから抜け出そうと試みた。
 
けれど、

「え、ちょっと……あ」

突然腕を掴まれて布団の中へと引き戻されてしまった。



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