ふしだらな医者ですが、 君だけの男になりました。
10.エピローグ
10.これは人生最高の晴れ舞台です
「ママ、お姫様みたい」
まだ二歳だというのにおしゃまな娘は私のドレス姿を見て目を輝かせている。
パパを見たら王子様、とでもいうのだろうか。正臣がどんな顔をするか楽しみだ。きっとデレデレになることだろう。
結婚式はしなくてもいいと思ったのだけれど、お義父さんを帰国させる口実が欲しかったのもあって私たちは挙式を決めたのだ。
最初は家族だけでこじんまりと祝うつもりだったのだけれど……、小春と高木先生夫妻。里奈と野原さんも東京から来てくれることになって、正臣も職場の上司や同僚を呼ぶことにした。
ドアがノックされ、母が娘を連れて行った。正臣との二人きりの時間を作ってくれるという。
正直照れるからそういうのは要らないって言ったのだけど、“ファーストミート”という儀式があるらしい。
私は中庭へと出た。
バラが咲き誇り甘い香りが鼻先をくすぐる。分かりやすいくらいに緊張した大きな背中を目掛け、私は歩み寄る。
肩を叩くとゆっくりと振り返り泣きそうな目で私を見つめた。
「……きれいだよ、明日美。てか、きれいすぎて顔がにやける」
「バカ。でも分かる。にやけるの。正臣もかっこよくて、王子様みたいだよ……」
いい終わらないうちに彼の胸に抱きすくめられてしまう。広くて、厚い胸板。
タキシードも似合うけどやっぱり白衣の方がしっくりくる、私だけの王子様。出会ってからいろいろなことがあったけど、いま、とても幸せで充実した毎日を過ごしている。
「明日美も、お姫様みたいだ」
それから私たち家族三人は大好きな人たちに見守られ、最高の結婚式を挙げた。
おわり