ふしだらな医者ですが、 君だけの男になりました。
2.これは人生最大の嫉妬です


2.これは人生最大の嫉妬です

「そういえば最近、荒木先生変わりましたよね~」

 ナースステーションの中央のテーブルでパソコンに向かっていた私に後輩の野原さんが話かけてくる。
 業務中に無駄話は厳禁だが、急な入院もない、患者さんもの状態も落ち着いているような日はつい気が緩んでしまうのも事実だ。
 
 しかも荒木先生の話題とあって、つい会話に乗ってしまった。

「そ、そうかな。どんなところが?」

 言いながら私は荒木先生を見る。

カウンターの椅子に座り高木先生と話し込んでいる。どう見てもいつも通りの先生だ。毎日いていると分からなくはなりそうだけど。

同棲を始めて今日で一週間が経つ。私たちが付き合い始めたことはまだ誰にも気づかれていないはずだ。

「どこがという明確な変化はないんですが、ざっくりいうと色気ですね」

「色気?」

 私は首を傾げた。もともと年上男性の魅力はあると思っていたが、色気を感じたことはなかった。

「はい。めちゃいい男のフェロモン出てません? あれは女が出来ましたね、しかも極上の」

 “極上”という言葉に吹き出しそうになる。野原さんの観察眼はすごいけれど、私は極上の女なんかじゃない。

「いや、それはないでしょ。極上とかありえないよ!」

 強くいいすぎたせいか、野原さんは不思議そうに首を傾げる。

「どうして先輩が否定するんですか?」

 彼女の目に見つめられて、思わず視線をそらした。

「そうだよね、ごめん」

 鋭い彼女のことだ。あまり下手なことをいうと、見透かされてしまうかもしれない。

「まあ私は高木先生推しですが、荒木先生の方が女に尽くすタイプそうなので、付き合うなら荒木先生で正解だと思います」

「……でも、先生は女癖が悪いって聞くよ? 合コンもよくいってたみたいだし」

 今は行く気配はないが、今後はわからない。もしそんなことをしたら即刻家を出ていこうと思っている。

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