ふしだらな医者ですが、 君だけの男になりました。
1.これは人生最大の過ちです


1.これは人生最大の過ちです

「よお、久保ちゃん。おはよう」

 今朝あんなことがあったというのに、どうしてこんなにも能天気に声をかけてこれるんだろうか、この男(ヒト)は……。

 私はパソコンに視線を向けたまま完全無視を決め込んだ。

お願いだから察して欲しかった。顔をみれないくらい気まずいという私の乙女心。

今日くらいそっとしておいてくれませんかね!

「あれ、聞こえなかった? もしかして相当お疲れ? まあ、そうだよな。だって朝から二」 

「あの!」
 
 その言葉を遮るように座っていた椅子から思い切り立ち上がった。

「ち、ちょっといいですか、荒木先生!」

 いいながら私は先生の腕を掴んでナースステーションから廊下へ引きずり出す。

ここは都内にある総合病院の外科病棟。私は看護師として働いている久保明日美。

これから朝の申し送りが始まろうとしているというのに、わざわざ余計な話を持ち掛けて私の気を引こうとしてきたのは外科医の荒木正臣(あらきまさおみ)先生だ。

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