ふしだらな医者ですが、 君だけの男になりました。
3.これは人生最大の幸せです?
3.これは人生最大の幸せです?
先生との同棲生活も二カ月が経ち軌道に乗り始めたのだけれど……、当初程私のことをかまわなくなっていた。
いい方向に考えると、お互いを信頼し落ち着いた関係が構築できているということなのだが、この頃の先生の態度を見ていると“釣った魚に餌をやらない男”でしかない。
「ねえ、今日は早く帰ってくる?」
ある日の夜勤明け。病棟の廊下で先生を見かけた私は人がいないのを確認してから小声で話しかけた。
「……いや。雑用がたまってて遅くなると思う」
「なんの?」
「主に書類整理だな、医局で」
そう言われてしまえばこれ以上何も言えなくなる。
医師の仕事は看護師である私が知る以上に大変だろうし、これまで私と過ごしていた時間は無理して生み出していたんだろうなと推測できたから。
「悪いな。先に寝ててくれていいから」
先生はとても申し訳なさそうな顔をして、顔の前で手を合わせた。
「分かった。仕事頑張ってね」
私はそうとだけ言ってナースステーションへ戻った。日勤のスタッフへ申し送りをし、残りの仕事を片付けてスタッフルームに置いてある荷物をもってエレベーターに乗る。
更衣室で鏡を見た時、口角のさがったブスな自分に気が付いた。