幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
想い出の海
「すごい……! 潮風が気持ちいい!」

 高速道路に入って、ひゅんひゅんスピードを上げていった清登の車。

 風を感じて、沙也はつい感激の声を上げてしまった。

 もうすっかりいつも通りの調子で、明るく言えた、と思う。

 しばらく走って、天気がいいから窓を開けてもいいよ、と言われたので、少し開けてみた。

 速度が出ているのだから、強めの風が入ってきて沙也の髪を、さらさら揺らす。

 でも初夏の風だ、かえって心地良かった。

 さらに、海辺を走っているのだから、潮の香りも漂ってくる。

 海で泳ぐには早すぎるけれど、そんな気分が少し味わえそうだ、と思う。

 そうだ、一回だけ清登とも海に行ったな、とふと頭の中に想い出がよぎった。

 小学生の頃だったと思う。

 学校の遠足が、低学年と高学年に分かれてのものだったのだ。

 四年生だった沙也は、六年生の清登と一緒に行けることになって、とても嬉しくなったものだ。

 確かこの近くの海だった。

 なにしろ小学生だったからよく覚えてはいないけど……。
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