【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部更新中】

準備万端で出発…?


 帰りは馬車なので送らなくていいと言ったのだけど、ヴィルがどうしても邸まで送りたいと言うので一緒の馬車で帰る事になった。

 ドルレアン国へ出発するのは10日後に決まったので、帰邸したら色々とマリーやお父様に伝えなければならないわね。


 そしてソフィアにも。

 港から船に乗って行く事になるので、船旅に少し不安がありつつも、この国を出るのが初めてなのでワクワクする気持ちもある。


 でも四人で歓談した後からヴィルがとても大人しい。


 領地に来たあたりから笑顔が増えていって、最近は本当によく笑うようになっていたのだけど、なんだか逆戻りしたかのようだわ。

 母親との今までのわだかまりがすぐに消えるはずはないわよね。


 むしろ王妃殿下の態度が変わったから、今の方が複雑な気持ちなのかもしれない。


 「陛下と王妃殿下って、最近はすっかり仲が良いの?」

 「まぁ、母上の誤解が解けてからはあのような感じだ……未だに慣れないが、不仲よりはいいけれど」

 「前はこんな感じの顔だったわよね」


 私は不敬かもしれないと思いつつ、以前の王妃殿下の顔真似をしてみる。

 案の定吹き出して大笑いするヴィル。その様子を見てやっと笑顔が戻ったと少しホッとしたのだった。


 「そうやって笑っていると、小さい頃のあなたに戻ったみたいね」


 出会った頃はお互い笑顔で遊んでいた時もあったし、楽しく過ごしていたオリビアの記憶を思い返す。

 今の私があの頃のヴィルにまた会えたら、母親の分まで彼を笑わせたいと思って行動していたに違いない。
 
 そんな事を考えていると、隣りに座っているヴィルから「……それは困るな」という声が聞こえてくる。
 
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