【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部更新中】
穏やかな(?)航海
そう言えば、船に乗ってからマリアの姿が見えないわね。
確かに一緒に乗船したはずなんだけど……私がマリアを探していると、船長室の近くにある小さな扉の方から声が聞こえてきた。
それは、先ほどガイアス卿がマリーを連れて入っていった扉。
「みんなー!こっちに来て――!」
「? 今の声、マリアよね」
「あの扉……階段室だ。まさか下の船内にいるのか?」
私の問いにヴィルが答えてくれて、皆でその扉の前まで寄っていく。
すると、またしてもマリアの声が聞こえてきて、今度は扉に近付いたからか声のボリュームが大きくなった。
「早く――!」
私は皆と顔を見合わせ、ひとまず扉を開いてみる。
「なんだか下から物音がするわね……やっぱりこの中にいるみたい。下りてみましょうか」
「はい」
イザベルの返事と共に、ソフィアが私の手をぎゅうっと握ってくる。
未知の領域に行くのは怖いわよね、きっと。
お化け屋敷に入るかのような心境でいるのかしら……そう思ってソフィアの方を見ると、なんだか頬を赤く染めてワクワクしているような表情に見えた。
楽しみなのね!思わず胸がきゅんとしてきて、ソフィアの手を握り返すとこちらを見上げ、ニコッと笑いかけてくる。
なんて可愛いの――――抱っこしたいくらいだけれど、階段だから危ないものね。
抱き上げたい衝動をグッと堪え、しっかりとソフィアの手を繋ぎ、一緒に階段を降りる事にしたのだった。
先にヴィルが入っていき、次いでイザベル、私とソフィアの順で下りていく。
ヴィルは乗船してすぐに船内をチェックしていたので、きっと下の階の事を知っているでしょうから、すいすい下りていった。
彼の背中を信頼してついていきながら、下の階に降り切った通路を右へと進んでいく……すると、豪華な扉の前にたどり着いたのだった。