【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部更新中】
潰れていく甘い旅行計画と天使のような通訳 ~王太子Side~
皆で船に乗り、船内を隅々までチェックをして回っていると、王宮のサロンのような一室を見つけ、真っ先にオリビアに見せようと思い立った。
天窓もついているし、きっとオリビアなら「綺麗!」と目を輝かせて喜ぶに違いない。
船長を務めるガイアス卿とドルレアン国への航海の時間や天候など、色々な打ち合わせを済ませると、船は目的地へと出港した。
今こそオリビアにあの部屋を見せる時だ、と思い、「オリビア……」と声をかけようとすると、下の船内からマリアの大きな呼び声が聞こえてくる。
「みんなー!こっちに来て――!」
「? 今の声、マリアよね」
「あの扉……階段室だ。下の階にいるのか?」
まさか……あの部屋にいるわけではないだろうな、という嫌な予感が頭を過ぎる。
そんな私の杞憂などどこ吹く風と言わんばかりに、マリアの我々を呼ぶ声が大きくなった。
「早く――!」
……もはや嫌な予感しかしない。
そして皆で声のする方へと向かっていくと、案の定マリアが待っていた場所は、私がオリビアに真っ先に見せたいと思っていた部屋だった。
なんて事だ…………私が一番に紹介したかった。
マリアにこの部屋を紹介されたオリビアは、実に良い顔で喜んでいる。その表情は私が引き出したかったというのに……!