【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部更新中】

謁見


 扉がゆっくり開かれると、深紅のカーペットが中央に真っすぐ敷かれ、その先にはドルレアン国王であるオーグスタ・フォン・ドルレアン、その人が玉座に座っていた。

 隣りには王妃殿下もいらっしゃって、大きく煌びやかな扇で顔を少し隠しながら、鋭い目線をこちらに向けている。


 国王陛下がヴィルの伯父様のはずだけれど、見た目は正直似ても似つかない容姿だった。

 レジェク殿下とも似てないわね……小さくて丸く、ヴィルのお母上である王妃殿下とも全然似てないわ。


 ちんまりとした可愛らしい体型とは裏腹に眉間には深いシワが刻まれ、黒いウェーブがかった肩までの髪に、厳しい表情ながらも口元はニヤリと笑っている。

 ちょっと脂ぎってるように見える顔が私達の姿を捉えると、より醜悪に歪んだように見えた。


 でも、なんだろう……怖いと思う場面なんだろうけど、笑いがこみ上げてくる。

 体型のせいかしら?こんなところで吹き出してはダメよ、オリビア。


 私が笑いを堪えて震えていると、怖がっていると勘違いしたのか、ヴィルが「大丈夫か?」と小声で聞いてくるので、一瞬体がビクッとしてしまう。

 ヴィルの方を見て静かに頷くと、国王夫妻のもとへ近づき、挨拶を交わした。


 「よう来たな、ヴィルヘルムよ。息災であったか?」

 「お久しぶりにございます、国王陛下、王妃殿下。父上、母上からもよろしく伝えてほしいと仰せつかっております」


 ヴィルの挨拶にすかさず隣りに座っている王妃殿下が口を挟んできた。
 

 「はっ!国王陛下とアナトリーンが?嘘を申すな。そなたの国が軍事支援を渋ったおかげで我が国は大損害を受けるところであったというに」
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