【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第34話 シェリルとギルバートの視察(7)
その真っ赤な短い髪は遠目から見てもよく分かった。その姿に、嫌な記憶の数々が脳裏をよぎる。でも、負けないと私はそちらに視線を注ぐ。そうすれば、彼の顔がしっかりと見えた。
何処となく精悍な顔立ちは、騎士と言っても過言ではない。なのに、何処となく儚げな印象さえも持ち合わせている。そんな彼は、私の方を見て口元を歪めた。
(……エヴェラルドさ、ま)
彼のその歪な笑みを見た瞬間、背筋に冷たいものが落ちたような感覚に苛まれてしまう。それを振り払うかのように首を横にゆるゆると振って、私は彼に向き直った。
「……シェリル様?」
ソフィちゃんが私のワンピースの袖を握って心配そうに顔を見上げてくる。そのため、私はにっこりと笑ってターラさんに「すみません、知り合いがいましたので、お話してきても構わないでしょうか?」と出来る限り優しい声で問いかけた。
「え、えぇ、それは別に構いませんが……」
ターラさんのその目は私の言葉を疑っているようだった。でも、肯定の返事をしてくれたので躊躇う必要はなくなった。だからこそ、私は彼の方に近づいていく。
近づけば近づくほど、彼の顔がまるで苦痛に耐えているかのような表情になっていく。彼のその鋭い赤色の目をまっすぐに見つめ、私は少し間をあけて「エヴェラルド様」とゆっくりと彼の名前を紡いだ。
「あぁ、シェリル様。どうも、お久しぶりですね」
私が声をかけると、エヴェラルド様は何でもない風に肩をすくめてそう言った。あまり覇気のないような、優男風の表情だ。けれど、私は先ほどの彼の表情を見ているし、彼の本性をよく知っているつもりだ。なので、「……エリカは、ここにはいませんよ」と言う。
何処となく精悍な顔立ちは、騎士と言っても過言ではない。なのに、何処となく儚げな印象さえも持ち合わせている。そんな彼は、私の方を見て口元を歪めた。
(……エヴェラルドさ、ま)
彼のその歪な笑みを見た瞬間、背筋に冷たいものが落ちたような感覚に苛まれてしまう。それを振り払うかのように首を横にゆるゆると振って、私は彼に向き直った。
「……シェリル様?」
ソフィちゃんが私のワンピースの袖を握って心配そうに顔を見上げてくる。そのため、私はにっこりと笑ってターラさんに「すみません、知り合いがいましたので、お話してきても構わないでしょうか?」と出来る限り優しい声で問いかけた。
「え、えぇ、それは別に構いませんが……」
ターラさんのその目は私の言葉を疑っているようだった。でも、肯定の返事をしてくれたので躊躇う必要はなくなった。だからこそ、私は彼の方に近づいていく。
近づけば近づくほど、彼の顔がまるで苦痛に耐えているかのような表情になっていく。彼のその鋭い赤色の目をまっすぐに見つめ、私は少し間をあけて「エヴェラルド様」とゆっくりと彼の名前を紡いだ。
「あぁ、シェリル様。どうも、お久しぶりですね」
私が声をかけると、エヴェラルド様は何でもない風に肩をすくめてそう言った。あまり覇気のないような、優男風の表情だ。けれど、私は先ほどの彼の表情を見ているし、彼の本性をよく知っているつもりだ。なので、「……エリカは、ここにはいませんよ」と言う。