【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第45話 アスキスの街へ
「クレア、マリン、エリカはいた?」
「い、いえ、こちらには……」

 それから私とクレア、マリンは一時間程度リスター家のお屋敷の周りを捜しまわった。ロザリア様には魔法で捜してもらっているけれど、なんでも人探しの魔法は時間がかかってしまうらしい。そのため、私たちは一足先にと徒歩で周辺を捜していた。

(……もう、この辺りにはいないのかも)

 あの子はお金をある程度は持っていると言っていた。それはつまり、遠くにも行けるということ。……もしも、リスター伯爵領の外に出てしまっていたら……と思うと気が気じゃない。

(あの子はリスター伯爵領に住むとは言っていたけれど……)

 けれど、人間とは気まぐれな生き物だ。もしかしたら、別の場所にいるかもしれない。

 ……私としては、あの子が幸せならばそれで問題ないと思う。笑って見送ったのならば、こんな風に捜しまわらなかった。

 ただ、私が捜しまわるのは――手紙に、涙の跡があったからなのだ。

 あの子は、泣きながら私の幸せを願っていると書いていたのだ。

(……私は、今後もエリカに会いたいの)

 もしも、ここで捜さなかったら。もう二度とエリカに会えないような気もした。なので、私は捜す。……あの子のことを、捜さなくちゃならない。

 そう思っていると、不意に遠くから「シェリル様!」とロザリア様が駆けてくる。そのため、私が彼女の方に視線を向ければ、彼女は「わかりました!」と言って私に地図を見せてくれた。

「エリカ様はアスキスの方にいらっしゃいます!」

 ロザリア様はそれを教えてくれると、地図のある位置に丸を付ける。そこは確かに、アスキスという名前の街だった。

「そう。……とりあえず、私はロザリア様と一緒にアスキスに向かうわ。……クレアとマリンは、ギルバート様に……」

 連絡してほしい。

 そう言おうとしたけれど、マリンがそれよりも早くに「私も、行きます!」と力強く言ってくる。
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