【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第50話 招待状
「はぃ?」

 エリカが怪訝そうな声を上げて、こちらを振り返る。

 そんな彼女の愛らしさに胸を打たれてしまいそうになるけれど、今はそれよりも大切なことがあると思いなおす。

「ちょっと、渡し忘れたものがあった」

 そして、ギルバート様はそうおっしゃって懐から一枚の封筒を取り出される。

 そのままエリカにその封筒を手渡せば、彼女はただでさえ真ん丸な目をさらに丸くしていた。

「……これって」

 彼女のその言葉に、私は静かに頷いた。

「よかったら、来てくれない?」

 そっとそう声をかければ、エリカは「……いいの?」と言いながら私とギルバート様の目を交互に見つめていた。

 だからこそ、私は頷きながら「エリカに、来てほしいのよ」と言ってにっこりとした笑みを浮かべる。

「……でも」

 エリカは少しためらいがちにギルバート様に視線を向けた。それに対してギルバート様は「……花嫁側の親族が一人もいないのは、変だろう」とおっしゃってプイっと顔を背けられる。

 確かに少し変かもしれないけれど、別に咎められるようなことじゃない。つまり、これはギルバート様なりの照れ隠しなのだ。

「……そう、ですか」

 エリカはギルバート様のお言葉を聞いてどう思ったのだろうか。そう思い不安を抱いていれば、エリカはおもむろにプッと噴き出す。

「お義姉様ったら、おかしなお顔」

 それから、彼女はそう言ってくれた。

「……ありがとう。ぜひとも、出席するわ」

 彼女はそれだけを告げて、馬車に乗り込んだ。大切そうに封筒を抱きしめる彼女の姿を見つめていれば、エリカは口パクで「バイバイ」と伝えてくる。それから、その手を振ってくれた。

 なので、私もゆっくりと手を振る。エリカの乗った馬車が見えなくなるまで手を振っていれば、不意にギルバート様に肩を抱き寄せられる。
< 157 / 164 >

この作品をシェア

pagetop