【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第9話 異母妹との日々(1)
「あのね、エリカ。ここのスペースは私がお世話をしているのよ」

 それから数時間後。私は空き時間を使って、エリカをお庭に連れ出していた。私がお世話をしているガーデニングスペースに連れてきて、笑いかける。そうすれば、エリカは少しだけ表情を崩してくれた。エリカは多分、緊張している。

「……お義姉様、無趣味だったのに」
「そうよ。けど、ここに来てガーデニングの楽しさに目覚めたの」

 私がしゃがみ込んで土に触れれば、エリカは興味深そうに私の手元を覗き込んでくる。エリカ、確かこういう土とか苦手だったはずなのに。

「お義姉様。私は今、平民として暮らしているのよ。土に触れるくらい、なんてことなくなったわ」
「……そう、なのね」
「まぁ、お父様もお母様も頼りにならないし、自分でやるしかないのよ」

 エリカはそう言って、土に触れる。その後「……お義姉様、すごいわよね」なんて零していた。

「お義姉様は『豊穣の巫女』なのよね。……羨ましい」
「……エリカ」
「イライジャ様も、最終的にお義姉様の元に戻ったわ。私よりも、お義姉様が良いって、おっしゃっていたの」

 エリカは、本当にイライジャ様のことが好きだったのだろうか? 多分、私を見下すために奪ったに等しいのだろうけれど。それでも、その表情を見ると本気で好きだったのではないかと、思ってしまう。でも、私のその考えを読んだかのように、エリカは「未練はないわよ、あの男に」なんて言っていた。

「あんな男、こっちから捨ててやるべきだったわ。だから、未練なんてないの。……それに、男なんてもうこりごり」

 私にぎこちなく笑いかけながら、エリカはそんなことを言う。その目には、少なからず怯えが映っているように見えて、本当にエリカは何かに怯えているのだろうなぁ、なんて思った。
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