【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第15話 花嫁修業の日々と異母妹(3)
「……ギルバート、様」

 私がゆっくりとギルバート様のお名前を呼ぶと、ギルバート様は気まずそうに頬を掻いていらっしゃった。だから、私はもう一度手元のデザイン画に視線を落とす。デザインはとても綺麗で、なんというか……若い女性が好みそうなデザインだった。もちろん、私も好きな雰囲気。

「……本当は、もう少し決まってから見せるつもり……だったんだ」
「それは、サプライズということですか?」

 ギルバート様の目を見てそう問いかければ、ギルバート様は頷かれる。……嬉し、かった。サプライズとか、そういうことよりも。ギルバート様が、そこまで私のことを想ってくださっていたということが、嬉しかった。

「……シェリルがこれを着ると思ったら、どれも捨てがたくてな」

 床に散らばったデザイン画を拾い集めながら、ギルバート様はそうおっしゃる。……私、本当に愛されているんだ。そう思ったら、なんだか……嬉しすぎて涙が出てきてしまいそうだった。最近忙しくされていたのも、こういうことなのだろう。

「シェリル?」
「い、いえ、なんでも、ないです……」

 目元を拭っていれば、ギルバート様は慌てふためかれる。なので、私は首を横に振りながらそう言った。嬉しくて、幸せで。あぁ、私ここに来てよかった。そんな気持ちを、再認識する。こんなにも私のことを愛してくださるお方が、私が心の底から好きだって思えるお方が、出来たのだから。

「ギルバート様。……私、これを着てギルバート様のお隣に、並びたい、です」

 私はデザイン画を抱きしめて、そう告げた。昔は婚姻にも前向きになれなかった。だけど、今は違う。……ギルバート様のお隣に、並びたい。このウェディングドレスを着て。

 そういう意味を込めて私が笑えば、ギルバート様は恐る恐るといった風に私に手を伸ばしてこられる。そのまま、その手が私の目元を拭う。
< 49 / 164 >

この作品をシェア

pagetop