【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第16話 花嫁修業の日々と異母妹(4)
 そして、私とギルバート様はエリカが使っている客間の前まで移動する。移動している間、私とギルバート様は特に言葉を交わすことはなかった。ただ、無言で移動をするだけ。私はエリカのことを考えていたし、多分ギルバート様も別のことを考えていらっしゃったのだと思う。

(……エリカ、大丈夫かしら……?)

 疲れもストレスも溜まっていたみたいだし、私に何か力になれることはないだろうか? そう思う気持ちは、確かに本物で。本当に、エリカのことを大切に思っているのだと再認識した。

 それから、私が客間の扉をノックしようとした時だった。不意に、ギルバート様が私の耳元で「……エリカ嬢のことで、話があるんだ」と囁かれた。……その囁き声に、私は胸がきゅんとするのを実感した。って、そうじゃないわ。エリカのことよね。そう、エリカのこと。

「……承知、いたしました」

 私がどきどきとする胸を押さえながらそう返事をすると、ギルバート様は「夕食後、二人の時間を作ろう」とおっしゃって、私の頭を一度だけ撫でられると立ち去って行かれた。……何よ。ずるいわ。私がギルバート様のことを好いていると知っていて、そんなことをするなんて。

(……本当に、ずるいわ)

 赤くなった頬を誤魔化すように押さえた後、私は気持ちを切り替えるために一度だけ咳ばらいをした。その後、客間の扉をノックする。そうすれば、中からマリンの「どうぞ」という声が聞こえてきた。
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