【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第18話 二人きりの時間を(1)
 夕食後。私はギルバート様に指定された時間に、ギルバート様の執務室を訪れていた。本当は私室に行こうかと思っていたのだけれど、ギルバート様に拒否されてしまったためだ。……まだ正式な夫婦じゃないし、そこは仕方がないのかなぁと思う気持ちは、ある。けど……やっぱり、いろいろと考えてしまって。

「シェリル。悪い、少し待たせてしまったな」
「……いえ」

 私が執務室のソファーで寛いでいると、ギルバート様がそう声をかけてくださる。だから、私はにっこりと笑ってそれだけを告げた。本当ならば私とゆっくりするつもりだったらしいのだけれど、急遽サイラスさんに仕事を頼まれたとか、なんとか。そういうこともあり、私は十分ほど待っていたのだ。

(……なんていうか、もう少しだけでいいから、近づきたい)

 ギルバート様は、いつだって私と距離を置いて座られる。今だって、そう。婚約者同士なのだから、もう少し近くに寄ってもいいと思うのだけれど。

 そう思って、私はおもむろに立ち上がってギルバート様のすぐお隣に腰を下ろした。そうすれば、ギルバート様は「シェリル?」と狼狽えたような声を上げられていて。……鈍い。

「ギルバート様。……私、もう少しくっつきたいです」

 ギルバート様の鈍さに半分呆れながら、私はギルバート様の服の袖をつまみ、上目遣いでそう言ってみる。私のその態度を見られたギルバート様の視線は……露骨に、泳いでいた。

 ……最近、エリカのこともあって二人きりになれていない。だから、私はその分くっつきたいと思っていたのに。……そう思っていたのは、私だけなのだろうか?
< 58 / 164 >

この作品をシェア

pagetop