【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第24話 ロザリア・ルシエンテス
 その後、私はエリカのことをマリンに任せて、クレアを連れてロザリア様のお部屋へと向かう。早足でお屋敷の中を歩いていれば、使用人たちが「どうなさいましたか?」と声をかけてきてくれて。だから、私は「ちょっと、ロザリア様に用事があるの」と笑って誤魔化しておいた。

(余計な心配は、かけられないものね)

 リスター家の使用人たちは、みな優しい。そのため、余計な心配などかけられなかった。それに、中にはやっぱりエリカのことを好ましく思っていない人もいる。それも、関係している。

「……ロザリア様、いらっしゃいますか?」

 それから、私はロザリア様のお部屋の前に立ち、ゆっくりと扉をノックしてそう声をかけた。すると、中から「はいは~い」とのんびりとした声が聞こえ、扉が開く。

 ロザリア様はその茶色の髪を下ろしており、どうやら寛いでいたらしい。そんな彼女にお仕事を割り振るのは憚られたけれど、エリカの一大事なのだ。背に腹は代えられない。

「どうなさいましたか、シェリル様?」

 ロザリア様はにこやかに笑って、私にそう問いかけてくる。なので、私は「……一つ、お願いがありまして」と彼女の青色の目をまっすぐに見つめて告げた。

「……かしこまりました。準備しますので、三分ほどお待ちくださいませ」

 私の様子を見て、ただならぬことだと感じ取ってくれたのだろう、ロザリア様は扉を閉めてお部屋の中に戻っていく。そんな背中を見送って、私はただ俯く。……エリカのこと、助けてあげたい。でも、私じゃどうにもならない。『豊穣の巫女』だと言っても、こんな時に役に立たないのならば、意味なんてないじゃない。
< 76 / 164 >

この作品をシェア

pagetop