【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第25話 舐めない方が、いいですよ?
 それから、私はロザリア様をエリカの元に案内した。扉を開けると、何処となく禍々しい空気に私は眉をひそめてしまう。しかし、ロザリア様はこういう空気に慣れているのか、すたすたと歩きエリカの横になる寝台に近づいていった。

「……ふむ」

 その後、ロザリア様はそんな声を零す。そして、私のことを手招きしてくれた。

「……そ、その」

 ロザリア様のお隣に立ち、エリカの顔を覗き込む。少しずつ顔色が悪くなっているように見えるのは、気のせいではないと思う。その表情は歪んでおり、悪夢でも見ているのかもしれない。そう思うと、私の胸がぎゅっと締めつけられたような気がした。

「……ぃ、や」

 エリカの唇が動き、小さく紡いだのはそんな言葉。その言葉に胸を締めつけられていれば、ロザリア様はエリカの顔に手をかざし、何やら不思議な呪文を唱えていく。

 すると、エリカの顔の周りに温かい光が降り注ぎ、きらきらとした光の粒が飛び散っていく。それらは、エリカの身体に吸い込まれていくようで。とても、幻想的な光景だった。

 その光景を私が呆然と見つめていると、エリカの目がゆっくりと開く。その目は何処となく潤んでいるけれど、焦点ははっきりとしている。それにホッと息を突けば、エリカは「……お義姉様?」と私のことを呼んでくれた。

「……エリカ、大丈夫?」

 ゆっくりとそう問いかければ、エリカはこくんと首を縦に振ってくれた。……よかった。そう思って私が胸を撫でおろしていれば、不意にロザリア様は「……この呪いは、男性がかけていますね」とボソッと零されていて。

「そんなこと、分かるのですね」
「まぁ、私はこの道のプロなので。いろいろと術者の情報を得ましたから、あとでギルバート様に報告しておきます」
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