苦くも柔い恋
迷い
好きじゃないなんて言いつつ結局受け入れて、中途半端な事をしているというのは分かってる。
だけど生まれて初めて好きだなんて言われて、それがかつての好きな人で、それを拒絶出来るほど恋愛慣れが出来ていなかった。
思わせぶりな事をするなと香坂に釘を刺されたけれど、どこまでがそれに入るのかそのラインが分からない。
一体自分はどうしたいのか、千晃をどう思っているのか。
それを知るには、全てが遅すぎる気がした。
「和奏、お前夏期休暇はあるのか」
あの後まともに顔も見れないまま入浴まで終え、眠れる気は全くしないがさっさと横になってしまおうと布団に入った時に千晃が唐突に尋ねてきた。
「…あるよ。お盆期間は塾閉めるから、その時は休み」
「ならその間、俺がこっちきても問題無いよな」
「はっ?」
ガバッと布団を捲り千晃を見れば、ベッドの縁に寄りかかっていた彼と目が合った。
「休みの間ずっと居るつもり?」
「何か予定あったか」
「特には、ないけど…」
お盆なんてどこに行っても人が多いから毎年自宅で半引きこもりだ。
友人と予定が合えば遊びに行ったりはするけれど、今年に限ってみんな恋人だったり帰省だったりで約束をしていなかった。