苦くも柔い恋
過去〜始まり〜
その日は夏休みで父も母も仕事で不在、美琴も朝から友達と遊びに出ており和奏は自室で1人夏休みの課題をしていた。
時計の針が丁度天辺を超えた辺りの頃、そろそろ昼食でも食べようかと思いリビングへと降りてエアコンを点けキッチンに立った。
するとその時、不意にインターホンが部屋中に鳴り響いた。
母か美琴がネットで何か頼んだのだろうかとドアホンも確認せずに出てみれば、そこに立っていたのは千晃だった。
「えっ…」
「……」
お互い見つめ合ったまま硬直し、少し時間が経ったところで千晃が口を開いた。
「…美琴は?」
「あ、朝から友達と遊びに行くって出て行ったけど…」
「はぁ?…チッ!この暑い中無理矢理呼びつけておいて忘れるとかふざけんなよアイツ」
不機嫌そうに顔を歪め悪態をつき「帰るわ」と踵を返した千晃の背中を慌てて呼び止めた。