苦くも柔い恋
デート
汗が張り付いて気持ちが悪かったので軽くシャワーを浴びて出てみれば、千晃が朝食の支度をしてくれていた。
時間的には朝と呼ぶにも憚られる時間なのでブランチと言ったほうがいいだろう。
冷蔵庫にあったもので作ってくれたシンプルな料理を食べていると、千晃が急に話を振ってきた。
「和奏、なんかしたい事あるか」
あまりに唐突な質問に、口に運ぼうとしていたソーセージがぽろりと落ちてしまった。
「…急になに?」
「デートに誘ってんだよ」
「え?」
何を今更と思ったけれど、先日の言葉を思い出す。
全てをやり直したいと言った、あの日の言葉を。
「因みに何も言わなかった場合は連休中ずっと家デートって事になるが、それだと俺の理性がいつまで保つか保証はできないからな」
「…早めに帰るって選択肢は」
「無い」
きっぱりと言い放つ千晃に含みのある視線を送る。
「…千晃って本当に女性経験無いんだね」
デートへの誘い文句としては正直微妙だ。
ときめきも何もあったものじゃ無い。
案の定千晃は眉を寄せ、拗ねたように睨んできた。