苦くも柔い恋
重なり合う心
ふと意識が浮上したのは、鼻腔を掠める良い匂いに気付いたからだった。
はっと身体を起こすと肩からブランケットがずり落ち、外を見ればまだ明るいが日が傾きかけている。
どうやら気付かないうちに眠ってしまっていたようで、最後の記憶がひどく曖昧だ。
確か片付けは千晃がやると言ってくれたからお願いして、買い物に行くまで少し勉強をしておこうとテキストを開いたところまでは覚えている。
真夏のクーラーのなんたる恐ろしさよ。
連休ですっかりとだらけきってしまった身体に頭を抱えていると、キッチンに立っていた千晃と目が合った。
「…えと…起きました」
一体なんの報告だと自分でも思ったが、千晃は「おー」と言うだけでそれ以上追及はしてこなかった。
「いま何時…」
ひとりごととして呟いたつもりだけど、千晃から18時と返事が返ってきた。
「……寝過ぎた…」
「熟睡してたな」
「うう…来週から仕事戻れる気がしない…」