苦くも柔い恋
不穏
怒涛の夏期講習も終わりを迎え、その年のカレンダーがまたひとつ減りはしたものの未だ残暑の厳しい日が続いていた。
和奏の不安は今のところ杞憂となり、土曜日の逢瀬は続いているし平日も出来る限りの連絡はくれていて、千晃から寵愛とも呼べる愛を受けている。
これまで時間を埋めるような甘い関係が1ヶ月続き、公私共に落ち着いた生活を送っていた。
そんな9月最後の週末、ダメ元で有給申請してみたところなんと了承をもらうことができた。
曰く間も無くして受験もラストスパートに入る為、それまでに取れる休暇は取っておけということらしい。
そんな上司の親切心と幸運を利用して、和奏は初めて千晃の元へ訪れることにした。
土曜の朝一で電車に乗り、新幹線を併用して幾度か乗り継ぎをして聞いていた最寄駅と到着する。
一時騒がしい喧騒に揉まれたけれど千晃が居を構える場所は比較的に静かな場所らしい。
改札を抜けたところにいると連絡が来ていたけれど一体どこだろう。そう思いながらきょろきょろと見回していると後ろから背中を叩かれた。