苦くも柔い恋


翌朝早朝、和奏は千晃と共に実家に向けて家を出た。

着いたのは昼前。
美琴から千晃と来るように言われていたので一緒にインターホンを鳴らした。

迎え入れてくれたのは、美琴だった。


「いらっしゃい、2人とも」


満面の笑みの美琴とは反対に、和奏は青い顔をしており千晃は彼女を睨みつけている。

そんな事などものともせず、美琴は家の中へと促した。
リビングには久しぶりに見る両親が硬い表情で待っていた。


「久しぶりだな、和奏」


父がこちらを見て声をかけてくる。
そして千晃にも視線を向けた。


「とりあえず話そう。千晃くんも座ってくれ」

「…はい」


父の隣で母は頭を抱えており、まともに話せる状態に見えなかった。

そんな絶望的な空気の中で1人、美琴は笑っていた。

対面する両親の隣に座る美琴と目が合うと、至極機嫌が良さそうに彼女は言った。


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