苦くも柔い恋
かけなえのないもの
季節は初夏。
週末の逢瀬はまだ続いている。
遠距離のやり方にもだいぶ慣れてきて、気づけば再会して1年が過ぎていた。
1年前を振り返って言うと「揶揄うな、黒歴史だ」と、そう眉を下げる千晃はやはりどこか落ち着いて大人びていた。
実家にも時々帰っていて、母に千晃とはどうだと聞かれればありのままを答え、その度に多くは語らないが安心した表情を見せるので少しずつ疑心は消えているようだ。
美琴とは今も会えていない。
母から聞く限り妊娠の経過は順調そうで、もう少しで予定日だと聞く。
「毎日陣痛が怖いって喚き散らしているわ」と母が呆れて言っていたので、とりあえず元気そうで安心した。