苦くも柔い恋
拒絶





過去を思い返していた和奏の意識がゆっくりと戻ってくる。

視界がクリアになり、視線を前に向ければそこは自宅のキッチンだった。


社会人となった今現在、和奏の住んでいる部屋は6階建ての単身用1Kのマンションの4階。

家を出る条件としてオートロックセキュリティと角部屋、3階以上の部屋である事を母が譲らなかったので少し大学からは離れたがその場所に決め、愛着が湧いてしまった今現在も住み続けている。

引越しが面倒だったというのも否定はできないが。

けれど近くに話が出来そうな場所がない難点があった事を今日初めて知り、仕方なく千晃を家に上げることにした。


千晃を適当にその辺に座らせ、和奏は冷蔵庫からペットボトルの水を取り出してその半分を一気飲みして深い息を吐いた。

そのままそれを持って部屋に続くドアを開けば、中央のテーブルの前に座っていた千晃の対面に距離を取りつつ腰を下ろした。



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