永遠を糸で縫い留めて

ピン

彼がくれた赤いピン 

あたしの黒くさらりとした髪によく映える 

自慢のぬばたまを 目立たせてくれて ありがとう 

ピンは あたしが走ると 

てらりと陽光にあたって うすくれないにひかる 

ああ 落としちゃった 

あんまり 速く走っていたから 

ピンはころころと 坂道を転がり 

やがて 一本の もみの木の下へと 辿り着く 

あたしは しゃがんでそれを拾おうとしたけれど

「そういえば 彼のこと 

あんまり すきじゃなかったなぁ」と思い返し

すべてに興味をなくして そっとそこから去っていった 

風のように

< 121 / 484 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop