永遠を糸で縫い留めて

チェロを弾く少女

晴れた日の緑が萌ゆる中庭で

昼下がりに君が チェロを弾く姿を見るのが好きだった

雲間から零れる白い光が 君の鼻筋を撫で

弦を照らし 音楽を彩ってゆく

君の音楽を聴いていると
 
記憶の彼方から 死んでいた思い出が 蘇らされるような感覚に陥る

あれはセピア色の遠い日

母の袖を引いて通りを歩いていた

母は僕を その場に残して立ち去って行った

青い蜜柑だけを残して

夕凪が去ってゆく

ふと目が覚めると

チェロの音だけが僕の耳を打っている
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