永遠を糸で縫い留めて

8月9日、花火散る

母に「花火が上がっているから見に行っておいで」と言われて外へ出た


雨が降るかもしれない そんな予感は後にして


坂道の途中 筆で塗ったような暗闇の中に 花が咲いていた


黒を背景に 太陽が粉々に砕かれたような ひかりが散って


手を伸ばして摑もうとするも すぐに消えてしまう 氷のような


雨がやってきた 私は動けない 花火をもっと見たいから 


やがて この瞬間も終わる 明日になれば8月の思い出として溶ける 


刹那の瞬間を収めようとするカメラも家に置いてきて


ただ闇と消えるひかりの花だけが そこにはあった
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