永遠を糸で縫い留めて

チェンソー

よく歩く公園で J-POPを聞いていた


古いけれど懐かしく 今の歳になって沁みてくる曲 


最後のフレーズになった時 ぶぉぉんと響くような音が重なる


きらきらとした明るい音楽に 不穏な色だった 


イヤホンを外す 


そばの木が おじさんふたりがかりで伐られていた


チェンソーの音だった


いつも見慣れていた木 もうそんな歳だったのか


ああでも 寂しさが湧きあがる


どうか伐らないで 


忘れていた思い出湧き上がる 秋の風とともに


ああどうか 伐らないで


心の叫びは チェンソーの音にかき消えて


思い出さえも斬られてしまう


私は声さえもかけられず


黙ったまま 伐られてゆく木から目を背けて


ふたたびイヤホンを耳につけて


寂しさを音楽でかき消すだけ


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