永遠を糸で縫い留めて

ベンチ

長い年月 ここに座る人は 様々な景色を見てきたのだろう


春のうららかなひかりの中を 空も知らぬ雪のように降る桜を


夏の刺すような日差しの中を 命の緑の粒を集めて手を広げる葉を


秋の透明な空気の中を 紅や金色に染まってひらひらと 


水をふくんだそよ風に乗って落ちてゆく枯葉を 


冬の凍った風を切り裂くように ふわふわと静かに舞い落ちる白い雪を


ベンチに座る人々は 見てきたのだろう 


日々入れ替わり 人は変わっても


私もそのひとりなのだろう 


ただなんとなく 腰を落ち着けたこのベンチに


一体いくつの人生が重なってきたのだろう 
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