永遠を糸で縫い留めて

森

流れ行く雲の端が　水蒸気のように薄青の空へ溶けてゆくのを　


公園の木のベンチに座って　うすく口を開けながら　ぼうっと見上げていた


葉の影が　そこに重なって　ひときわ黒が目立っている


冷えた1月の風をうなじに感じながら　遠い過去の記憶が　ふいによみがえる


あれは　私が今よりももっと幼いときだった　確か　


母と些細なことで喧嘩をして　家を飛び出し　公園に逃げた　


ここではない　別の公園だったはずだ　どこの公園だったかは覚えていない


森の奥深くまで歩いた　ただひたすらに


足が疲れた　しゃがみこんだ　真っ黒な世界


水と森の濃い香りに包まれて


このままこの世界に溶けて　消えてしまいたいと泣いていた


あの頃の私　誰も覚えていなかった私　


確かに思い出したよ


そんな日もあったなぁ　そう笑えるほどに時が過ぎたよ

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