永遠を糸で縫い留めて

過去のひと

あのひととはもう連絡も取っていない


だけれど忘れられないの 


ふとしたときに 思い出す 昔使っていた香水のかおりを嗅いだときのように


白い梅の花が 紅い梅の花と重なって咲いているのを見たときに


何年も聞いていない音楽が カフェで突然流れてきたときに


押し入れを片付けていたら 使っていなかった鉛筆がころりと現れたときに


急に思い出すの あのひとのことを


それがいいことなのか 悪いことなのかわからない


あのひとにされた悪いことのほうが 思い出す確率が高くて 苦しいけれど


でも思い出さなければ もっと罪悪感があるの 


欠片でもなぜか常に 残しておいたほうがいい気がするの


忘れたほうが 楽に生きられるのに 


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