永遠を糸で縫い留めて

偕楽園

梅の園 他の花は知らず


まだ春になっていない2月の終わり


去年見た梅の花たちが忘れられなくて


知らないひとたちと籠にゆられて たどりついた


白 すもも 紅 透き通った黄


どれも見事だった うつくしかった


枝の先まで覆うように 花が入り乱れて 咲いていて


だれかに手渡すように


私はここに来てよかった


芳醇な香りにつつまれて 淡いよろこびに満たされて


私は生きていることを実感したの


白とうすべにの雲が 足元にどこまでも続いていて


ああ この景色を見るために 冬を乗り越えられてよかったと


ほろりと飲んだ梅酒とともに 流れてゆく気持ち


また来年の2月 ここに来ることを誓って


また春がやってきて 梅の記憶を忘れさせても
< 390 / 484 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop