永遠を糸で縫い留めて

夏の気配

 雨が降っている 6月のはじめからだ 
 雫の湿りが鼻先を掠めて 
 気怠くぬるい朝に水を飲んだ
 おはよう 夏
 濡れたアスファルトをただ歩いた 
 水の音が靴に跳ねて重いね
 丘の上まで登れば 夏が見えるかしら
 透明な傘に 白い光が当たって痛いの
 こんにちは 夏
 あの大きな木の下で 雨宿りしようかしら
 くるくる傘を畳んで一休み
 オレンジの光が 髪に当たって痛いの
 気付けば夜だった
 こんばんは 夏
 涼しいのか 熱いのかわからない
 ただぼんやりと高揚感があるわ 
 暗い橋の横を歩き続ければ 
 その先にぼんやりとした 光が灯っている
 お祭りかしら いいにおい
 ああ 夏って 何でこんなに楽しいのかしら 
 ステップ踏んで灯りに向かうわ 
 傘はそのまま河に捨てちゃった
 流れてゆく 過去にね 
ばいばい 
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