永遠を糸で縫い留めて

夕霧

六月の空


薄青と橙のはざまに溶け合う 午後七時がすきだ


許されない恋だとわかっていたのに 僕は君を選んでしまった


それだけしかなかった なんの才能も持たない僕は 恋をすることしかできなかった


人並みだと君は笑うだろう それでも僕にとっては人生を賭けた最後の恋だった


淡いものだと皆は笑うだろう 


僕にとってはこの身があの真っ赤な夕日の中に落とされて


燃えつきてしまうほどの激しいものだった


ゆたかな生活の中にいるから 


そんな恋をして 刺激を求めているだけなのだと言われたこともあった


それでもあの時の僕は 純粋で 真面目で 


素直に 君を想っていた


皆が汚れていると蔑むだろう 僕にとっては透明で綺麗なものだった


あの夕霧のように 薄紅と黄が溶け合う空に 君を重ねて見上げている
< 437 / 484 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop