永遠を糸で縫い留めて

ホワイトアウト

朝からニュースは

今年はじめての大寒波を告げている

僕はそれを横目で見ながら

金沢で買った九谷焼のブラウンのマグカップに

紅茶を入れて飲んでいる 

紅茶からのぼる白い湯気が 

結露した窓の向こうに広がる雪景色と重なる

どちらの方が白いのかわからない 

昨日家から逃げ出した白い愛猫は 

夜のうちに帰ってきた

雪が降る前でよかった 

彼が寒さで凍えて死んでしまうのではないかと 

不安でたまらなかった 

ニュースは時々 心をざわつかせる凶器にもなる 

だから紅茶を飲みながら そっと消した

訪れたのは静寂と しんしんと雪が降る音だけ

猫があくびをする 

世界のどこかで このホワイトアウトで傷ついて 泣いているひとがいたとしても 

今この空間だけは 穏やかで 平和だ
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