【コミカライズ】仕事の出来る悪役令嬢、薄幸王子様を幸せにアップグレードしておきました。

22 理由

 それから、私たち二人は一週間ほどオブライエン一家のアジトへと通った。

 ……けれど、彼らはたまに『帰れ』と繰り返すばかりで、話は一向に進展しなかった。

「今日は、どうだろうか……何かを言ってくれれば良いけどな」

「ええ。そうですね……」

 実は私は会社員時代に、ある会社に平日三ヶ月間通い詰めて、契約をもぎ取ったことがあった。

 それは、その会社の経営者がそういう営業方法が好んでいたからという情報を、先んじて知っていたから出来たことだった。

 けれど、今回はいくら通い詰めても、難しい可能性もあった。

 オブライエン一家ほどの暗殺者でなければ、既に隙なく警備を固めているエレインを暗殺することは難しいだろう。

 しかも、彼らは複数居る家族も、全員暗殺者。こういった家族で営む稼業であれば、たった一人の強い個人よりも、目的をひとつとするチーム戦で威力を発揮する。

 だから、もし彼らが私たちではなく……ダスレイン大臣に雇われてしまうと、致命傷にもなりかねない。私たちにとってはオブライエン一家は換えの利かない存在だけれど、あちらにとってはそうではない。

 そして、直近の彼らの情報と、これまで訪問する中で、私にはひとつ気になることがあった。

「ええ……このままだと、先方の対応に変化は見込めなさそうですね。今回は、彼らに高価な贈り物を届けましょう」

「え? どういうことだ?」

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