【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
閑話8 裏方(アネット視点)
「奥さまの現状を、見に来るのでしょう?」

 私がそう問いかければ、サイラスが神妙な面持ちで頷いた。隣にいるクレアは、美味しそうに紅茶を飲んでいる。

 この子は、相当マイペースみたい。……将来、大物になるわね。

「はい。もうそろそろ、儀式に取り組めるか。そういうチェックに来るそうです」
「まぁ、当然ね」

 そりゃあ、きちんと『豊穣の巫女』の力を扱えているか。

 それは知る必要があるし、神官にとっても重大な仕事だとはわかる。ただ、そう。

「神官って、いけ好かない奴ばかりだものね。……サイラスが不安になるのも、わかるわ」

 肩をすくめて、そう言う。サイラスは頷いた。

「今までも何度かこちらに来てはいるのです。そのたびに奥さまに厳しい言葉をかけていき……」
「全く、何処に行っても神官と言うのは高圧的ね」

 いつしか見た王都の神官も似たような感じだった。

 思い出したくもないことを思い出してしまって、眉間にしわを寄せてしまう。

「そうです。ご自分がどれほど偉いと思っているのか。……まったく、気に入らない」

 サイラスは私の同意を得られたからか、水を得た魚のように口を動かす。

 よくもまぁ、ぺらぺらと神官の悪口が出てくるものだ。

(というか、それほど鬱憤が溜まっているということね。……仕方がないかも、だけど)
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