【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第35話 前夜(1)
移動を終えた日の夜。
私たちは夕食を終え、各々の時間を過ごしていた。
ロザリアさんとアネットさまは、最寄りの街に出向いている。なんでも、魔法薬に使える珍しい材料があるとか、なんとか……。
私はお二人を見送って、与えられたお部屋のソファーに腰掛けていた。
お部屋の隅にはサイラスがいる。旦那様がこの邸宅の管理人とお話をなさっている今、一人じゃ寂しいので私がお願いしていてもらっている。
申し訳なさそうに言えば、サイラスは「いえいえ」と言ってくれて。彼は私が落ち着くようにと紅茶まで淹れてくれたのだ。
「奥様。……不安は、尽きませんか?」
サイラスが私のほうに近づいて来て、そう問いかけてくれる。
手に持つティーカップの水面を見つめて、私は控えめに頷いた。
「えぇ、やっぱり……ほら。初めてのことだし」
私の口から出たのは、驚くほどに弱々しい声だった。
「それに、私に全部が懸かっているのだと思うと……その、重荷が」
今、神官の人たちは必死に儀式の準備をしている。ロザリアさんとアネットさまが材料を買いに出向いたのは、私に万が一のことがあったときのためだということも、実は知っていた。
彼女たちはせっかくだし……と言っていたけれど、こっそりと話しているのを聞いてしまったのだ。
私たちは夕食を終え、各々の時間を過ごしていた。
ロザリアさんとアネットさまは、最寄りの街に出向いている。なんでも、魔法薬に使える珍しい材料があるとか、なんとか……。
私はお二人を見送って、与えられたお部屋のソファーに腰掛けていた。
お部屋の隅にはサイラスがいる。旦那様がこの邸宅の管理人とお話をなさっている今、一人じゃ寂しいので私がお願いしていてもらっている。
申し訳なさそうに言えば、サイラスは「いえいえ」と言ってくれて。彼は私が落ち着くようにと紅茶まで淹れてくれたのだ。
「奥様。……不安は、尽きませんか?」
サイラスが私のほうに近づいて来て、そう問いかけてくれる。
手に持つティーカップの水面を見つめて、私は控えめに頷いた。
「えぇ、やっぱり……ほら。初めてのことだし」
私の口から出たのは、驚くほどに弱々しい声だった。
「それに、私に全部が懸かっているのだと思うと……その、重荷が」
今、神官の人たちは必死に儀式の準備をしている。ロザリアさんとアネットさまが材料を買いに出向いたのは、私に万が一のことがあったときのためだということも、実は知っていた。
彼女たちはせっかくだし……と言っていたけれど、こっそりと話しているのを聞いてしまったのだ。