【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第5話 相談事
 次の日の朝。

 私は重苦しい瞼を開いて、ぼうっと天井を見上げる。

 ……身体は、まだ重い。まるで自分の身体ではないのではないかと思えるほどだった。

 そんなことを考えながら、少しだけ身体を動かして壁にかかった時計を見つめる。

 時間は、普段の目覚めの時間よりも二時間ほど遅い。

(……寝かせておいて、くれたのね)

 私の調子が悪いとき、このお屋敷の人たちは皆そろって私をそっとして、寝かせておいてくれる。

 それがありがたいような、何ともむず痒いような。

 そう思いつつ、私はサイドテーブルの上にあるベルをちりんと鳴らす。

 すると、数分後に寝室の扉が開いてマリンが顔を覗かせた。

「奥様~、お目覚めですか?」
「……えぇ」

 控えめにかけられた声に、私は返事をする。そうすれば、彼女はホッと胸をなでおろしつつ、私の方に近づいてきてくれた。

 押しているワゴンには、朝食などが載せられている。

「あまり食欲がないかもしれませんが、食事をされなければ余計にお身体に悪いので……」

 それは、理解している。なので、私は文句を言うことなく頷いた。

「旦那様にも、奥様がお目覚めになったという連絡を入れておきますね」
「……けれど、無駄に心配をかけてしまうじゃない」

 そうだ。ただでさえ旦那様はお忙しいのだ。最近はそのお忙しさに拍車がかかっているというし、あまり手を煩わせるわけには――。

「いえいえ、旦那様も奥様のご体調を心配されておりましたので」

 対するマリンはにっこりと笑ってそう言ってくれる。……そっか。私はもう、一人じゃないんだ。
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